カテゴリー「☆映画・音楽・アート」の33件の記事

2014年5月18日 (日)

テレビ業界の人間はいかにビジネスのことを知らないか

今シーズンのドラマの中で、TBSの「ルーズヴェルト・ゲーム」は面白い方だと思う。しかし、今夜の放送を見ていて目がテンになった。企業合併の基本合意書を調印するという最大の見せ場で、その契約書にうやうやしく「角印」を押しているのである。しかもこの角印が街のはんこ屋さんで数千円で作ったような安っぽいもので、およそ大企業のものとは思えない。

Stamp会社が使う印鑑には、銀行印のほかに角印(会社印)と実印(代表者印)がある。角印は、請求書や領収書や見積書などの日常業務に使う、社員なら誰でも押せる「認印」に近いもので、大企業なら複数個存在したり、電子的に複製されて押されることもある。

一方、実印は法務局に印鑑登録され、会社を代表して法的効力を持つものなので、当然一つしかないし、厳重に管理される。

契約書には角印と実印の両方が押されることはあっても、角印だけ押されるということは、絶対にない。これは、会社を起こしたことのある人はもちろん、契約書を交わしたことのあるビジネスマンだったら知らない人はいない。

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それが、企業合併という大事な場面で、こんなに大写しで、堂々と角印が契約書に押されていることに対して、プロデューサー、監督、カメラマン、スタッフや出演者の誰もおかしいと思わなかったということが信じられない。個人が、家の売買や銀行のローンを契約する時にシャチハタを持って行くようなもので、笑ってしまうくらい滑稽だ。

以前、このブログで「半沢直樹」もビジネス的にはツッコミどころ満載ということを書いたが(こちら)、同じ原作者のこのドラマも、残念ながら学習していないようだ。

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2013年11月29日 (金)

大変お得なユナイテッドシネマズの会員制度

ユナイテッドシネマズは都内では豊洲と豊島園にしかないのですが、大変お得な会員制度があります。
Clubspice

年会費500円を払うと:
one いつでも300円割引き(3D含む)
two 金曜日は1,000円(3Dは除く)
three 映画を有料で観ると1ポイント加算。6ポイントで1回無料、または2ポイントで1回分1,000円に割引(3Dはポイント利用は不可)
(後者で6ポイント使った方が、割引額800円x3=2,400円なので、1本分1,800円よりお得です)
fourネットで座席表を見て座席指定予約をし、窓口に並ばず発券機でチケットを入手できる。クレジットカードでも、楽天のポイントでも決済できる。

特にこの金曜日の1,000円という特典が大変お得で、ちょっと観ようかどうか迷っているような映画でも、1,000円だったらハズレでもあきらめがつくので金曜日に観るようにしています。

自分は、ネット配信やVODの時代になっても、やはり映画は最新作を大画面と大音響で観る体験に勝るものはないと思っています。しかし、日本の映画業界は、客を新しい配信方法にどんどん奪われているだけで、映画館に足を運ばせる業界としての努力が足りないといつも感じています。

アメリカでは映画は大体10ドル=1,000円で、地域や作品によって料金は変わります。ところが、日本ではハリウッドの何百億円をかけた大作も、自主制作に毛が生えた程度の低予算の邦画も、都内の一等地の最新鋭の映画館も、地方の朽ちかけた映画館も、一律1,800円。観る前から、それだけの対価を払おうと思う映画は、そうめったにあるものではありません。

その中で、このClub Spiceの試みは企業努力として大変評価できます。自分は、ユナイテッドシネマズの映画館の近くに住んでいることを幸運だと思っています。

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2013年9月23日 (月)

半沢直樹は面白かったけれど、ツッコミどころも多かった

半沢直樹は今シーズンのドラマではダントツに面白かった。だけど、特に後半はビジネスマンとしてIT業界や経営に携わってきた者として、「ありえないでしょ、それ」という設定があまりに多いために説得力を失って、純粋に楽しめなくなっていました。つまり、ヒューマンドラマとしては最高に面白かったけれど、ビジネスドラマとしては落第ということ。

友人の多くからは、「あれは漫画みたいなものだから、そんな細かいこと言わないでも」と言われました。でも原作者も脚本家も関係者もいいかげんなフィクションのつもりではなく、リアルなビジネスドラマとして作っていたと思うし、世の中が大絶賛しているものに違う視点でものを言うあまのじゃくが一人くらいいてもいいだろうということで、あえて書かせていただきます。

その1:
Ogiso裁量臨店で資料を隠して行員を陥れるという、人事部長としては最もあってはならない不正を行った小木曽が、懲戒免職にならず出向で済まされるとはありえない。

業績不振や事故ならいざしらず、明らかな悪意を持った不正を行っても身分が保証されるほど銀行は甘いところではないだろう(これは後の大和田常務も同じ)

その2:
Kurosaki西大阪スチールの計画倒産と東田社長の隠し口座の差し押さえに関して。会社破綻の際の債権には優先順位があり、租税債権は一般債権よりも優先されるのに、ドラマでは「早い者勝ち」になっている。

銀行同士なら早い者勝ちだろうが、銀行と金融庁はそもそも債権者として同格ではない。だから、仮に半沢が黒崎よりも先に東田の海外隠し口座を差し押さえたとしても、それは金融庁に没収されるはず。

その3:
Asano半沢に敗れた後、自らが出向させられる懲罰的な立場になってしまった浅野支店長が、半沢を本店へ栄転させる影響力があったとは到底考えられない

このドラマが正に描いているのは、落ち目の人間には目もくれないという銀行の姿。だとすると、浅野がいくら画策したところで、「お前、自分の立場をわかっているのか」と一蹴されるのがオチだろう。

その4:
たかだか一ホテルの予約システムの開発に113億円もかかるはずがない。仮にかかったとしても、一括前払いなどえはありえない。
IT開発というものは、通常、要件定義→設計→開発→テスト→導入→稼働というプロセスを踏み、開発で50%、納品で50%、またはこれくらいの大型案件になればそれぞれの段階で納品と支払いが行われるのが普通。

ドラマでは開発がどの段階まで進んでいたかは不明だが、仮に開発会社が破たんしても、支払いが終わってそれまで開発された成果物は発注主のものであり、完全には無駄にならない。

その5:
予約システム開発会社のナルセンが、特許侵害で訴えられただけで破綻するという設定になっているが、それはあまりにも単純すぎる。その特許侵害が伊勢志摩ホテルの予約システムに対するもののようだったが、まだ世の中に出ていない予約システムに対して、特許侵害を提訴できるはずがない。稼働していなければ損害はないので、賠償請求もできない。

そもそも「予約システムの特許」などはビジネスモデル特許と考えられ、設計製造技術などと比べると解釈が曖昧なので十分争えるし、裁判には長い月日がかかり、仮に負けたとしても修正すればいいだけの話し。訴えられただけで破綻していたら、世界中の会社はつぶれまくってしまう。まともな会社だったら、損害賠償保険にも入っているはず。とにかくこの予約システムに関しては、全くITビジネスを理解していない人間が書いた脚本であることは明白。

その6:
Oowada大和田常務が、頭取を失脚させ、自分がその椅子に座ることを狙って伊勢志摩ホテルの不良債権問題を計画したことになっているが、仮に頭取が失脚したとしても、封建的な銀行の中で、圧倒的少数派閥の常務が専務や副頭取を飛び越して頭取になれる保証は何もなく、むしろ別の人間を頭取に押し上げてしまう可能性の方がはるかに高い

あるとしたら不良債権問題の解決に大和田常務が具体的に大きく貢献したという材料が必要だが、それが「ホテルの社長交代を提案した」というだけではあまりにも乏しい。そんなに簡単に役員ごぼう抜きでメガバンクの頭取になれるはずがない。頭取に一番近い立場の副頭取という設定にすればもっと説得力があったのに。

その7:
そもそも伊勢志摩ホテルをつぶすために予約システムの特許侵害の提訴をするような好戦的なアメリカのホテルチェーンのフォスターが、もはや瀕死の状態になったホテルの資本提携に関して、突然天使のように豹変して伊勢志摩側の条件を全部飲むようなことがあるはずがない。伊勢志摩側に時間的猶予がなければなおさら強気に出るはずで、足元を見て徹底的に叩く方が自然だろう。そのライバルのホテルチェーンがフォスターを出し抜くために救いの手を伸ばすのだったらもっと説得力があったし、フォスターにも「倍返し」ができて面白かったのに。

その8:
数々の不正と銀行への背任行為を行った大和田常務を取締役に降格など、コンプライアンス上許されるはずがない。この脚本家もそうだけど、大体日本人のほとんどは「取締役」を「サラリーマンの上がり」の、部長の上の単なるひとつの格付けだと勘違いしているが、それは大きな間違い。

Photo

株主の立場に立って経営者を監視監督して取り締まるのが取締役の役割で、本来は業務執行者よりもはるかに誠実さが要求される立場。大和田常務が行ったことは刑事責任に問われる罪であり、このような不正を行った人間を取締役に留めておくなど、頭取の温情でどうにかなる問題ではなく、銀行という免許事業においては100%許されることではない

「倍返し」は流行語となったけれど、こうしてよく見てみると、小木曽人事部長、浅野支店長、大和田常務も懲戒解雇になるわけでもなく、すべて銀行での身分を保証されたままで、むしろ優しすぎる結末なのではないだろうか。少なくとも大和田常務は投獄されてしかるべきで、取締役へ降格という処分は軽すぎて、「100倍返し」にはほど遠い。

私は原作を読んでいないけれど、原作ではもっと色々と整合性が取れているらしい。ただ、テレビドラマの脚本を作る際に、ヒューマンドラマの面白さを損なわずに、現実の企業慣行と矛盾しない設定をすることは可能だったはず。ITビジネスのことを知らなすぎだし、法律やコンプライアンスに関する監修がいなかったとしか思えない。

ここに書いたことも、設定や説明を少し変えるだけで解決できたことがほとんど。面白かっただけに、そこが残念でならない。続編があるという終わり方だったので、続編ではぜひその辺をちゃんとして、このような「現実のビジネスをわかっていない茶番だ」などの批判を受けない、ビジネスマンの鑑賞に耐える脚本にしてほしい。

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2013年8月14日 (水)

今秋公開予定のダイアナ妃のドキュメンタリー映画

先日ご紹介したEbert.comの有料会員になると、わずか年間20ドルで、これから公開される映画の情報の予告編などのリンクが貼り付けられたメルマガが送られてきます。今日届いたメルマガで注目なのは、ナオミ・ワッツ主演のダイアナ妃のドキュメンタリー映画

この予告編の最後に、"Only in Cinemas"と出てきます。ということはビデオ化はされず、映画館の上映のみなのかもしれません。

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2013年8月10日 (土)

アメリカで最も信頼されている映画評論サイト

私が最も、というより唯一信頼している映画の情報源は、辛口映画評論家Roger Ebertが設立したrogerebert.com。彼自身は今年の4月にガンでこの世を去ったけれど、今は彼が信頼していたライター達が執筆しています。

Rogerebert

ハリウッド映画はアメリカの方が半年くらい早く公開されることが多いので、アメリカのAmazon.comからブルーレイを買う時や、映画館で観る時の参考にしています。必ずしもすべて意見が一致するわけではないけれど、ここに書かれている内容を参考にして、自分だったらこういう映画は好きか嫌いかの判断はつきます。

Pacificrim

昨日公開日に観たPacific Rimは菊地凛子が主演だということも知らないで、何の予備知識も先入観もなく観たら大変楽しめたのですが、後でここの評価を見たらやはり高評価でした。

映画の設定は荒唐無稽でその気になれば突っ込みどころ満載だけど、そんなことを気にさせないくらい圧倒的な映像のド迫力と、登場人物たちに感情移入させるストーリー作りのうまさは、さすがハリウッド映画。この作品は、ビデオに出るまで待つ、なんていうケチくさいことは言わずに、ぜひ映画館で、しかも3Dで観るべきです。

初期の3D映画は、観客に向かってものが飛んでくる、というようなこれ見よがしの映像が多かったですが、最近の作品はあくまでも自然な立体感や空間の奥行きを表現するようにしているので、疲れないし好感が持てます。この作品の中で一カ所、高所での建設作業の場面があるのですが、自分は高所恐怖症ではないのですが、足がすくむくらいリアルでした。

Worldwarz

一方、本日公開のWorld War Zは観ようかどうか迷っていたけれど、このサイトでの低評価を読んで、観るのはやめました。ホラー映画は大好きで、特にゾンビ映画はたいてい観るのですが、この作品の予告編を見てもなんかピンとこないと思っていたら、評価を読んでわかりました。

ホラー映画は、トップスターと金と物量作戦ではいい作品ができるわけではない、ということです。むしろ低予算の中で必死に工夫されて作られた作品の方が面白いことが多いです。一説によると、当初170億円の制作費予算が400億円という史上最大規模に膨れあがったこの作品、興行成績は映画史上最大の失敗になるのではないかと言われています。

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2013年8月 1日 (木)

「終戦のエンペラー」とセットで見るべき2本の映画

Emperor

昨年暮れからこの「終戦のエンペラー」が制作中のことを知っていたので、公開を楽しみにしていました。これまで、戦局に関する映画は日米双方から数多くの作品が制作されていますが、終戦処理に関するアメリカからの映画は初めてだからです。

映画が始まってすぐ、東京大空襲で焼け野原になった東京が何度も映し出されます。これを見た西洋人は、驚くと思います。西洋人の99%は、東京大空襲のことを知らないので、「東京には原爆を落とさなかったはずなのに」と思うはずです。しかし実は広島原爆の14万人、長崎原爆の7万人に匹敵する10万人の民間人の命を、アメリカは東京大空襲の無差別爆撃で奪ったという事実をこの映画ははっきりと言っており、それを世界に知ってもらうだけでも価値があると思います。

アメリカ人が大騒ぎする真珠湾攻撃の死者は2,400人、そのうち民間人はわずか68人です。9.11の同時多発テロでも死者は3,000人。アメリカは、本土を攻撃されたことがほとんどないから数千人の死者でも大騒ぎするけれど、一つの都市がほとんど丸ごと壊滅させられて、10万人もの死体がそこら中に転がっているということがどれだけ悲惨なことなのか想像もできないと思います。

Japan_rubble1

この映画は、マッカーサーから任務を受けて、10日間で戦争責任者を探し出し、その中でも特に昭和天皇の戦争に関する役割と責任を決定するという任務を受けたボナー・フェラーズ准将の苦悩を描いています。その苦悩とは、日本に対する復讐の象徴として天皇を処刑すべきだという米国のみならずロシアや英国からの圧力に対して、本当に責任を問うべきか、そうすることがその後の日本の復興と占領政策にとって正しいのか、という極めて難しい判断を限られた時間の中で下さなければならないわけです。

フェラーズは実在の親日家の軍人で、日本人女性とのラブストーリーはフィクションだけど、それ以外は概ね史実に基づいています。フェラーズが至った結論は、戦争を誰が起こしたかはわからない。しかし、戦争を強い意志で止めたのはまぎれもなく天皇である、ということ。昭和天皇が戦争を指示はしなかったものの、それを容認し、止めなかったということで戦争責任を問う見方はあっても、軍部の反対を押し切って戦争を終わらせたのは天皇であったということは多くの史実が証明しています。後に述べる宮城事件などはその最たるものです。

フェラーズの報告を受けたマッカーサーは、もし天皇が処罰・処刑されるようなことがあったら、日本人は各地でゲリラ的抵抗を起こし、あと100万人の兵力を補給しなければならないので天皇の戦争責任を問わないように連合軍を説得しました。

Macarthur_emperorしかし私がこの映画で最も注目していたのは、昭和天皇とマッカーサーの会談で、どのような会話が交わされたのか、そこをどう描くのか、ということでした。

マッカーサーの、天皇は命乞いをするかもしれないという予想を裏切り、天皇は「戦争の一切の責任は自分にあり、自分は極刑になってもかまわない。しかし日本国民の衣食住だけは確保していただきたい」とマッカーサーに懇願しました。ここまでは映画で描かれていました。

これはどれだけ信憑性があるのかわかりませんが、一説によると、この天皇の言葉を聞いたマッカーサーは、直立不動で天皇の前に立ち、 「天皇とはこのようなものでありましたか!私も、日本人に生まれたかったです。陛下、ご不自由でございましょう。私に出来ますることがあれば、何なりとお申しつけ下さい」と言ったという。それからマッカーサーは、日本国民の数を水増しして、米国から食糧を余分に確保したという。この部分に関しては史実の確認が取れなかったのか、それともアメリカの視点から描くことが不適切と思われたのかはわかりませんが、映画では全く描かれていませんでした。

この会談の内容に関しては、日米双方において公開されている正式な記録は存在しません。唯一あるのは、マッカーサー自身の回顧録で、そこにはこう書いてあります:

(天皇の発言は)私に強烈な印象を与えた。死を意味する勇気のある責任の表明は、私を骨の髄まで感動させた。その瞬間、私の目の前にいるのは、日本で最高の紳士であるということを悟った。

しかし残念ながらこの映画では、そこまでマッカーサーが感動していた、というような印象は与えませんでした。この映画は、概ね日本人を正しく描いた公平な作品だと感じましたが、ここの部分に関しては、そこまで天皇を美化するような描き方はできず、あえて言えばこれがアメリカ映画の限界、ということかもしれません。

ところで、この映画ではさらっとしか触れられていない「宮城(きゅうじょう)事件」のことを知っている人は意外に多くないと思います。1945年8月14日の御前会議でポツダム宣言を受託して降伏することが決まり、翌日正午に天皇による終戦放送があることを知り、本土決戦なしに降伏することを承服できない陸軍の青年将校たちが煽動し、約千人の軍人が、それの録音盤を奪取して終戦を阻止すべく皇居、NHK、首相官邸を襲撃して何人もの死者を出したクーデター未遂事件です。

「終戦のエンペラー」がきっかけで、この事件のことをもっと詳しく知りたくなり、降伏を決定した御前会議から終戦放送までの24時間を描いた1967年の映画「日本のいちばん長い日」のDVDを購入しました。

Photo

この映画を一言で表すと、「軍部の狂気」。これだけ日本が打ちのめされているのに、まだ戦ってさらに尊い命を失うことを厭わない軍部。そのために日本人が日本人を殺す。この映画で一番印象に残った台詞は、終戦直前の8月12日に、「もうあと二千万、日本人の男子の半分を特攻に出す覚悟で戦えば、必ず、必ず勝てます!」と外相に言い放った海軍軍令部次長。どうしたらここまで理性を失うことができるのか、今の私たちには到底理解することができない。白黒で2時間38分の長い映画ですが、息もつかせない作品でした。

「日本のいちばん長い日」が終戦の時を描いた映画だとすると、「激動の昭和史・軍閥」(1970、カラー、134分)は、2.26事件から軍部の台頭、それによる米国からの経済封鎖から太平洋戦争へ突き進んで行く開戦の歴史を東条英機を中心に描いています。

Photo_2

さて、この映画でも、「終戦のエンペラー」でもキーポイントとなるいくつかの場面が登場します。陸海軍が合同で作った、日米開戦計画とも言える「帝国国策遂行要領」が1941年9月6日に御前会議に提出された時に、天皇陛下は初めて発言され、外交交渉による平和的解決を望むという意思を短歌を詠むことで表明しました。しかしながら軍部はこれを都合のいいように解釈し、外交交渉が成立しない場合のための開戦の準備を着々と進めます。

この映画で個人的に面白かった場面が、この開戦計画を海軍参謀総長と陸軍参謀総長が天皇に説明に行った時のやりとり:

天皇: 「万一外交交渉が破れ、日米の戦争が起きた場合、この戦争はどのくらいの期間で終結できる確信があるのか」
陸軍参謀総長: 「3ヶ月で片付けるつもりです」
天皇: 「(おまえは)支那事変を始めた時、一ヶ月で片付けると言ったが、4年たっても片付いていないではないか」
陸軍参謀総長: 「支那は何分にも奥地の広い地域でありますので・・・」
天皇: 「支那の奥地が広いと言うなら太平洋はそれよりも広いではないか。どういう確信があって3ヶ月と申せるのか」
・・・まるで会社の上司と使えない部下のやりとりである。参謀総長がこの程度だから、無謀な戦争に突入して惨敗したことも必然だったと言える。

もう一つ興味深いのは、当初は戦争をしたくて仕方がなかった東条英機が、総理になると、天皇陛下の意向を受けて何とか戦争を回避する道を必死に模索します。しかし結局陸軍を支那から撤兵させることができないため外交交渉は進まず、日本は戦争への不幸にして避けられない道を歩んで行くわけです。この時、もし東条英機が強権を発動して陸軍を支那から引き揚げていたらどうなったか、太平洋戦争は避けられたかもしれないと考えると残念でなりません。

そして一旦戦争が始まると、東条英機は首相、陸軍大臣、参謀総長の3役を兼任して独裁力を強め、戦局がどんなに悪くなってもそれから目をそむけ、勝利を信じて戦いを続け、国民の犠牲を拡大していくわけです。東京裁判が不当だったという見方も多いですが、東条が、その遺言の中で、「自分は国際的には無罪だが、国民に対しては有罪だ」というようなことを書いていますが、その通りでしょう。

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2013年6月14日 (金)

映画「インポッシブル」は、「恵まれすぎていて」感動できない

今上映中の映画「インポッシブル」は、アメリカではすでにブルーレイ化されているので、アメリカのAmazon.comから個人輸入して観ました。「感動作」と言われるような映画を悪く言うのは勇気がいるのですが、正直な感想を書かせて頂きます。ネタバレがあるので嫌な人はこれ以上読まないで下さい。

Impossible_460x570

結論から言うと、私がこの映画のタイトルを付けるとしたら、Impossibleではなくて、Incredibly Lucky(奇跡的に幸運)です。この映画の主人公たちは、「恵まれすぎて」いて、「運が良くてよかったね」という感想以外にない。演技も良かったし、部分的にはいいシーンもありましたが、地震や津波に縁遠い西洋人ならともかく、この映画を観て感動した日本人がいるとしたら、よっぽど甘ちゃんなのではないかと思います。

津波の被害にあった一家5人がたまたま全員生存していたこと、バラバラになりながらも比較的簡単に再会を果たせたこと。一番不愉快だったのは、父親が一流多国籍企業に勤めていたおかげで、瀕死の重傷を負った母親をプライベートジェットに乗せてシンガポールの一流病院に運ばれるという、いかにも高給取りの西洋人が東南アジアでは当然受けるべきと考える特権階級意識丸出しのVIP待遇のエンディング

スマトラ沖地震による津波の被害に遭った人も、東日本大震災の津波被害に遭った人も、そんな特別扱いを受けることなく命を落として行った人は数知れない。もっと悲惨な思いをし、もっと大きな勇気と努力と家族の絆をもってしても、報われなかった人の方がはるかに多い。

そもそもが優雅なリゾートの旅先での被災だから、家や車や職場や同僚や親類を失ったわけではなく、本国に逃げ帰って、「大変な目に合った」と武勇伝を語ればそれで済む。何年もかけて、放射能汚染と闘いながら、住む場所や働く場所などの生活を立て直さなければならない、本当の勇気と絆が必要な現地被災者からすると、わずか数日間の苦境体験で「インポッシブル=不可能」な状況を覆したなどと軽々しく言ってヒーロー面をして欲しくないだろう。

最近、めっぽう涙腺が弱くなった自分でも、この映画では涙一つ出ませんでした。むしろ、残ったのは憤慨に近い嫌な後味だけ。

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2012年7月 3日 (火)

ソニーのMusic Unlimitedは「食べ放題のジャンクフード」

ソニーが、月額1,480円で、聞き放題の定額制音楽配信サービス「Music Unlimited」を始めた。

Music_unlimited

発表文にもサイトにもどこにも記載がないが(おそらく恥ずかしくて書けないのだろう)、この音楽配信サービスの音源は、48kbpsという、着うたフルなどに使われている低ビットレートのHE-AACというコーデックを使っている。iTunesの256kbpsと比べると1/5のデータ量だから、いくらHE-AACが良いとしても、相当音質は劣るし、もちろんCDとは比べるべくもない。

「音楽」は、「音が楽しい」と書く。それは、もちろん好きなアーティストや「楽曲を楽しむ」、という部分が大きいが、それと同時に、ボーカルの息づかいや、楽器の材質感や、あたかも目の前で演奏されているような音像定位や空気感などの、「音の良さを楽しむ」という世界があるはずだ。その「音の良さ」が、楽曲の良さをさらに引き立てて、「音楽」となるのだ。

Nwa860_b自分は、iPhoneのお粗末なオーディオ回路と圧縮音源を使うようになってから、めっきり音楽を聞かなくなってしまった。それは、そのような「音の良さ」を楽しめなくなったからだと最近気付いた。

だから、「このままでは耳が腐る」と思い、音源をすべて384kbpsのAACから、非圧縮かロスレスのコーデックに入れ替えて、皮肉にもソニーの「ウォークマン史上最高音質」を謳う音楽専用プレーヤーに切り替えたらもう雲泥の差で、再び音楽を楽しめるようになった。

MP3などの圧縮音源の平板な音を、貧弱なオーディオ回路と安物のヘッドホンでしか音楽を聞いたことのない若い世代は、ハイファイオーディオの体験がないから、「良い音」がどんなものかを知らない。このような人たちは、楽曲(メロディ)だけを楽しめればいいのかもしれない。圧縮音源でも低音やボーカルの領域はそれなりに再現されるから、流行のポップスを聞くにはまだいいけど、音像定位だけは救いようがないからクラシックやアコースチックな楽器は聞くに堪えない。

低ビットレートの方が、より多くの曲を端末に入れることもできる。だから、「聞き放題だから低ビットレートでいいだろう」という考えはビジネス的には正しいのかもしれない。多くのユーザーが48kbpsで"Good Enough"ならば、それは残念ながらメーカーと音楽業界が過去十数年かけて、そこまで消費者の耳を腐らせ、期待値を下げてしまったということだ。

しかし自分には、この姿勢は「どうせ味なんかわからないんだから、この程度のものを食わせておけばいい」と料理人が言っているように感じてしまうのだ。確かに多くの大衆はそうかもしれないけれど、ジャンクフードだけになったら食文化は衰退する。

かつて「オーディオ」という製品カテゴリーは、テレビやビデオと肩を並べる市場規模があった。しかし、映像の世界が、ビデオテープ→DVD→BD/HD→4Kと着実に正常進化を遂げる中、音楽の世界は30年前に発売されたコンパクトディスクで進化を止めてしまった。それどころか、むしろ圧縮音源によってその質を劣化させてしまったことが、ハイファイという言葉を死語にし、オーディオというビジネスを携帯音楽プレーヤー以外はほとんどないものにまで縮小させてしまった。CDの売上げは毎年減り続け、その差は音楽配信では埋まっていない。

言い換えると、映像の場合はライブパフォーマンスと録画されたコンテンツの品質の差はどんどん縮まっているのに対して、音楽の場合は、そのギャップは逆にどんどん広がっているわけだ。それが、音楽業界の低迷の大きな理由の一つであるということを、業界は認めようとしていない。映像に例えたら、今の音楽業界はワンセグ画質の映像だけになったようなものだ。

私は、このブロードバンドとストレージが安価になった時代にソニーがやるべきことは、このような低音質サービスとは正反対の、DSDやFLACなどの高音質コーデックを使って、アーティストが魂を込めて録音したマスターテープの高音質をそのまま再現できるハードウェアと配信プラットフォームだと思っていた。それが技術的にも立ち位置的にも主導できるのは、プロオーディオと、コンスーマー用の端末と、音楽会社を持つソニーしかないはずだ。

ソニーにはぜひ、音楽再生の品質と音楽文化を後退させることだけでなく、映像の世界のように飛躍的に向上させることをやってほしい。そうすれば、再び「オーディオ」という市場とともに、音楽ビジネス全体が活性化するのではないかと思う。

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2012年4月25日 (水)

Michael Franksのデジタル・リマスター高音質CD!

Michael_franks_cd

この画像を見てピンと来た人には説明無用でしょう。約35年前に発売された、言わずと知れたAOR (Adult Oriented Rock)の名盤中の名盤です。大学時代から2枚ともLPレコードの時代から所有していて、それこそ擦り切れるくらい聞き込んでいるのですが、これが初めてデジタル・リマスターされ、しかもSHM-CDという高音質CDで発売されるとなってはファンとしてはじっとしていられない。

2月上旬にタワーレコードから発売案内のメールが届き、即予約をしてすっかり忘れていた頃に届きました。

Sleeping_gypsy_xga
パッケージは無機質なプラスチックケースではなくて、昔のLPレコードのような紙ジャケット仕様になっています。

ところで、ご存じない方のために、「高音質CD」とは、「SHM-CD」や「Blu-spec」という名称で、携帯電話の液晶画面に使われる非常に透明度の高い樹脂や、BluRayに使われる高品質な材料を使うことによって、読み取り時のエラーやドロップアウトを防いで高音質を実現するものです。

デジタルの世界で、ディスクの材質というようなアナログな要素を変えて音が良くなるのかと最初は半信半疑だったのですが、これがびっくりするくらい違うのです。音の立ち上がりや、明瞭度が全然違うのです。

先日、あるエンジニアの方から聞いたところでは、音飛びをしないまでもCDプレーヤーは汚れや傷や材質に起因するデータの欠落に対して常にエラー補正をしており、エラー補正をすると回路の電圧がわずかながら下がるので、それが音質に悪影響を与えるとか。だから、電源もサーボも強固な何十万円もする高価なCDプレーヤーよりも、安価なプレーヤーの方が高音質CDの効果はあるらしいです。

最近、過去のCDがこの高音質CDで少しずつリイシューされているので、お気に入りのCDが高音質版で発売されていれば、少しづつ手持ちのCDを置き換えているところです。

このMichael FranksのCDに関しては、原盤から最新の技術でデジタル・リマスターもされているので、更に音質が良くなっていて、以前のCDと聴き比べてみると明らかに「音が前に出る」感じがします。

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2012年3月31日 (土)

私が唯一店頭でCDを買う店、銀座の山野楽器

最近、本やCDは欲しいものがわかっている場合は、価格は安いし、当日か翌日には届くので、ほとんどAmazonから購入しています。Amazonはレコメンドエンジンが優秀なので、買おうと思っていた以外の「発見」もそれなりにあります。それでも唯一、実店舗でCDを買う店があります。それは銀座の山野楽器です。

銀座の山野楽器は新しいアーティストやアルバムとの出会いがあり、「買物体験」が楽しい、というのがその理由です。特に、私の好きな3階のジャズ売場は、1階の邦楽売場とは違って落ち着いた大人の雰囲気で、大変気に入っています。あと一階上がるとギター売場があるのも、ただ眺めるだけでも楽しいです。

この売場が優れているのは、スタッフが本当にジャズが好きで、わかっているからです。そのことが、色々なところで売場から伝わってきます。まず、ここに行くたびに楽しみにしているのは、スタッフお勧めのアルバムの特徴が細かく書いてある手書きのPOPです。それも、メジャーなアーティストよりは、あまり聞いたことのない「掘り出し物」が多いです。これは、売っている商品を徹底的に聴き込み、愛していなければできません。それを見て「ああ、こういう感じは自分の好みだな」というものを買えば、はずれることはありません。

Masa_sumide そのパターンで今日出会ったのがこのCD。この住出勝則というアコースティックギタリストは知らなかったのですが、テクニックといい、アレンジといい、素晴らしい。このアルバムはカバー曲ばかりで、Just The Way You Are, Part Time Lover, Penny Lane, Arthur's Theme, I Can't Tell You Whyなどの洋楽だけでなく、赤いスイートピーや、元気を出して、オリビアを聴きながらなどの外国と日本の名曲が違和感なく選曲されています。

そして、山野楽器の二つ目の優れたポイントは、売場のBGMの選曲が素晴らしい上に、それを大変音のいいオーディオシステムで流していること。これは、ジャンルごとにフロアが分かれている店でないとできません。ワンフロアに全ジャンルを売っているような店では、BGMは流行のポップスしかかかることはありませんから。今までここに来て、その場にかかっているアルバムを買ったことが何度もあります。実はそのような客も多いようで、「BGM人気盤」というPOPが貼られたCDもあり、それがまた新たな出会いを生んでくれたりします。

Koiところで、ここで使われているKOIというサテライトスピーカーシステムは、超小型ながらびっくりするくらいいい音がします。BOSEから独立したエンジニアと、バークリー音楽大学で共同開発され、「人間心理音響学」に基づいて、周波数特性よりは人間の感知する「いい音」の再現を目指しています。胸にズシンと響くような重低音と、極めて自然なボーカルや楽器の音が再現され、楽器と同じような音の放射をするので、スピーカーの外側にいても音像に立体感があります。専用アンプ込みで価格は270,900円とちょっと高いですが、ここで販売もしています(かなり欲しいです)。

Cris_flory_460

さて、本題に戻すと、今日も売場で流れていた素晴らしい演奏に惚れて買ってしまったのがこれ。Swing Jazzのギタリスト、Chris Floryの新譜で、ゲストにScott Hamiltonのサックスを迎えています。余裕から来る、力の抜けた軽快な演奏は、ものすごく心地よい。思わずバーボンをロックで飲みながら聞きたくなるアルバムです。スイングジャズ、特にジャズギターが好きな人なら絶対にお勧めです。

この銀座の山野楽器のような音楽に対する知識やこだわりは、ターミナル駅の大型チェーン店のアルバイトしかいないような店では決して見ることはできないので、そのようなところには足を踏み入れません。今後、本やCDの店頭販売は、このような商品との出会いや、楽しい「買い物体験」を提供してくれるような工夫がなくて、「ただ商品を並べて売る」というだけではすたれる運命にあると思います。

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