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2018年9月 5日 (水)

関西国際空港の台風被害は人災だ

関西地方に台風が上陸した朝、関西国際空港に燃料を運び終えたタンカーが風にあおられて連絡橋に衝突して、空港と陸地を結ぶ唯一の交通手段を遮断してしまった。

どうせ飛行機は飛ばないのに、なぜ台風上陸直前に給油しなければならなかったのが理解に苦しむ。しかも、いかりは下ろしていたらしいけれど、海上保安庁からは関空島から5.5キロ離れれるように指示されていたにも関わらず、船長の判断で2.2キロしか離れていなかった(当初は20メートルと誤報されていた)。その二つの判断ミスが、この一大事を招いた。

関空と陸地を結ぶ唯一の手段がこの連絡橋。ITの世界では避けなければならないとされているSPOF=Single Point of Failure(単一障害点)だ。一カ所に障害があるとシステム全体が動かなくなるものはあってはならない、という考えだ。この連絡橋以外には小規模でもトンネルなどの代替路がない。そうであれば、万が一連絡橋が使えなくなった場合の代替交通手段をすぐに動員できる用意をしておくというのがBCP=Business Continuity Plan(事業継続計画)というものだ。

しかも、空港内は停電で、エアコンも効かず、携帯電話もつながらない、ろくに食料も支給されず、寝る場所も確保できない状態で5000人以上が夜を過ごした。公表されている防災計画では1万人分の水と食料が3日分あるはずなのに、なぜ一部の人にしか支給されなかったのか。

停電になったのは、空港への電力が遮断されたからではない。配電設備が地下にあり、そこに浸水したからだ。これは、福島第一原発の事故と同じ欠陥設計が原因。実は関空は、オープンしてからなんと3.5メートルも地盤沈下している。その対策として、防波壁を2メートル追加している。1.5メートル足りない。だから波が乗り越え、滑走路は完全に浸水し、建物の地下に大量の海水が流れ込んで停電になったのだ。仮に浸水したとしても、配電設備がもっと高いところにあれば停電にはなっていなかった。これが三つ目の人災。

朝になって、空港に取り残された人たちを、高速船で神戸とピストン輸送している。だけど一回に100人くらいしか運べなくて往復1時間かかるから、今日の夜中まで一日かけるとのこと。昼頃になってようやく損傷を受けていない方の道路の安全が確認されたのでシャトルバスの運行が始まったけれど、全然数が足りなくて炎天下に10時間以上人が並んでいる。なぜ、他の場所からもっと大量に船やバスを手配して一気に運べないのか。やっていることが全て場当たりで、連絡橋が使えなくなった場合を想定した事業継続計画は全くなかったとしか思えない。

おそらく関空の完全復旧には数週間かかるだろう。その間、航空会社、旅行会社、鉄道会社、貨物会社、空港内のサービス業とそれに従事する人々の経済的損失は膨大だ。タンカーが連絡橋に衝突したのは前述の二つの判断ミスによる「人災」だから、アメリカだったらあっという間に関空に対して損害賠償請求の訴訟が起こされるだろう。

しかし考えようによっては、東京オリンピックに向けて、このような社会インフラの脆弱性を点検するいい教訓になったとも思う。災害が起きるとその復旧ばかりに気を取られるけれど、そこから学ぶということをやらなければまた同じことが起こる。

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