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2014年5月29日 (木)

「原価」とは何だか知っていますか?

「実は信じられないくらい安い『物』の原価をバラしちゃいます」という(実は古い)記事が今ネットで出回っていて、それを読んだ人がこれを鵜呑みにして、あたかも企業が暴利を貪っているような誤解を与えているので、書かせてもらう。

この記事によると(抜粋):

コンタクトレンズ2万円~3万円 原価30円

スーツ一般的価格3万円~4万円 原価約3000円程度

トヨタ カローラ140万円 原価22万円

ファミレスのハンバーグ 製造単価25円~35円

歯ブラシ100円~ 原価1円

ハンバーガー店のポテト240円~ 原価約15円

コーラ1缶:小売価格 130円程度 原価 5円以下

ポカリスエット、原価98銭

ビニール傘原価10円

コンドーム原価 1枚あたり約2円80銭~3円

CDソフト 製造原価約30円

口紅3000円~ 製造原価20円

いかに世の中の人は「原価」ということを正しく理解していないか、というような記事だ。これは出処不明の様々な所からの寄せ集めの情報だから、中には正しそうな原価のものもあるけれど、ほとんどが「原価=原材料費(または変動費)」と解釈しているように思える。コンタクトレンズの原価が30円、歯ブラシの原価が1円などというのは、明らかに材料費しか見ていない。

一般的に「原価」とは「製造原価」のことであり、製造原価は、材料費、労務費、経費の原価の3要素を、それぞれ直接費と間接費に分けられるのが会計的には正式な見方。でもそれではわかりにくいので、今回は製造原価を、製品を製造すると一個あたりにかかる変動費と、一個も製造しなくても既に発生している固定費に分けて説明しよう。

製造原価に含まれる変動費には、原材料費やパッケージだけでなく、工場でかかった労務費や光熱費も含まれる。固定費には、金型や製造設備の償却費やその製品の設計に関わった技術者の研究費や、特許使用料・ライセンス料も含まれる。(逆に、製造原価に含まれないものは、本社・間接部門の一般管理費や、営業や、物流、広告宣伝などの販売費があり、「総原価」と言った場合にはこれらも含まれる。)

つまり原価には、単純に製品一個あたりの変動費だけではなく、かかった固定費を製造販売台数で割って配賦される費用も含まれる。だから販売数が変われば原価も変わるのだ。

たとえば、ある売価1万円の工業製品を作るのに、研究費や金型費などの固定費が合計3000万円かかったとする。これは一台も売らなくても発生して、原価に含めなければならない費用だ。この製品が10万台売れると企画した段階では、1台あたりの固定費は3000万円÷10万台=300円となる。この製品の変動費(材料費と加工費)が一台あたり3000円だとすると、製造原価は3300円となる。しかし、もし実際に1万台しか売れなかった場合は、その実際の原価における固定費は3000円にも膨れ上がってしまって、製造原価は6300円となる。だから、原価とはそんなに単純なものではないのだ。

企業が儲けすぎかどうかという議論をするのであれば、本来、一般管理費や販売費も含めた総原価で見るべきかもしれないが、製造原価だけで見ても、原価における原材料費はごく一部であって、ものを作るためにはそれ以外にも多くの費用が含まれていることを知るべきである。

安い原材料に「付加価値」を加えて高い製品に仕立てる、ということは製造業の基本中の基本である。そう考えると、コストや価格に占める原材料費が安いということは、悪いことではなく、いいことなのだ。それが、「こんなに原材料が安いならもっと安く売れるはずだ」などと思うのは、感情論としてはわからなくもないが、ビジネス的には全く的外れだ。

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