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2011年3月12日 (土)

「日本へのお見舞い、そして称賛」

3月11日のNew York Timesに、同紙元東京支局長で、アメリカの報道の世界で最も権威のあるピューリッツァー賞を2回も受賞したNicholas Kristof氏による、今回の大地震に関して勇気づけられるコラムがあったのでご紹介します(原文はこちら)。日本をよく理解するアメリカ人が、自国民に対するメッセージとしてこのような文章を書いてくれたことに感謝します。

あまりにも感動したので、私は翻訳者のはしくれとして(本業ではないので、まさに「はしくれ」です)、日本人に勇気と誇りを与えてくれるこの文章を多くの人に伝えたいと思い、勝手に翻訳しました(NY Timesには連絡するとともに、もしこの翻訳文を使いたい場合は、自由に利用してもよいと伝えてあります)。


「日本へのお見舞い、そして称賛」

2011/3/11 ニコラス・クリストフ

日本の歴史史上最大の地震に見舞われた日本人へ、心からお見舞い申し上げます。私は、1995年の神戸の大地震の時、ニューヨークタイムズの東京支局長として報道にあたった者として、これは言わなければなりません: これから数日・数週間の日本に注目してください。私たち(米国人)も、必ず学ぶべきことがあるからです。

それは、日本政府が特に震災の扱いが上手だからではありません。1995の地震の時、政府は救援施策をひどく誤り、海外から送られた薬や捜索犬を検疫で使わせないなどして、国際的にも恥をさらしました。地震後の最初の数日間、まだ瓦礫の下で生存者がいるのに、政府の無能力のおかげで、死ななくてもいい人たちが亡くなりました。

しかし、日本の国民は、忍耐強さと規律正しさにおいて、実に誇り高かった。日本には、英語には同義語がない「我慢」という言葉があります。神戸の人たちは、勇気と、団結と共通の目的意識で正にそれを行い、私はその姿を見て感嘆しました。

日本に住んでいる間、日本人の規律正しさと礼儀正しさにはよく感心していましたが、神戸の地震の時ほどそれを強く感じたことはありません。神戸はほぼすべてが破壊され、店舗の窓も割れていました。私は、略奪や、救援物資の奪い合いを見つけようと思い、街中を探しました。最後にやっと、二人の男による盗難に合った、という店主をみつけることができてほっとしました。

私は、「こんな自然災害を悪用して同じ日本人が犯罪を犯したということに対して驚きましたか?」とちょっと芝居がかった質問をしました。そうするとその店主は驚いたような顔をして、「誰が日本人だと言いました?犯人は外国人でしたよ。」と答えました。

日本には部落民という差別された階層が存在しますし、在日韓国人は蔑視されています。しかし、他の国と比べると、日本にはひどい貧困は存在しないし、共通の目的意識が強く存在します。中流層は非常に厚く、企業のトップは伝統的に給料が高過ぎると見られることが恥ずかしいというような風潮がありました。そのような共通の目的意識は、国の社会的な織物に織り込まれた糸のようなもので、自然災害や危機の時には特に目立ってきます。

誉めすぎてもいけないので申し上げると、日本人の礼儀正しさの下で、学校や会社でのいじめや、違法行為によるやくざの金儲け、政治家と土建屋の癒着による納税者の搾取などの問題は存在します。しかし、神戸の地震の後に、やくざまでが被災者に物資を提供するカウンターを設置するの見たのは驚愕でした。日本の社会的な織物は決して破れるどころか、折り目さえ入りませんでした。

このような忍耐強さは、日本語にも織り込まれています。日本人はよく、「仕方がない」と言います。そして他人に対して最も一般的に言う言葉は、「頑張ってください」です。自然災害は、日本の「運命」=動きと命という二文字を組み合わせた言葉として捉えられます。

文句を言わないことや、集団的な回復力は、日本人の魂に染み込んでいます。短い間、長男を日本の学校に通わせたことがあるのですが、真冬でも短パンで通学しなければならない小さな子どもたちの姿は今でも忘れられません。私は風邪をひかせるだけだと思っていましたが、それは人格を形成するためだったのです。それは「我慢」の精神を教える、もう一つの手段だったのです。そしてその「我慢」が、第二次大戦後に日本を復興させ、1990年頃のバブル経済がはじけた後の「失われた10年」を耐えさせたのです。もしかしたら、日本人はもっと文句を言った方がいいと思うくらいです。そうすれば政治家ももっときちんと反応するかもしれません。

もう一つの要素は、私たち人間と自然との関係もあるかもしれません。アメリカ人は、自然をねじ伏せる、というような対立関係にあると認識しています。それに対して、日本人の発想は、人間は単に自然の一部であって、歴史上の数多くの地震も含めて、その波に乗っているという考えです。1923年の関東大震災では10万人の死者が出ました。日本語における「自然」という言葉は、わずか100年少し前に出来た現代的な言葉で、それは伝統的にそのコンセプトを表現する必要がなかったからです。神戸の地震の後のエッセイで、私は同様のポイントを上げ、最後に日本の最高の詩人である芭蕉の言葉でしめくくりました:

うきふしや竹の子となる人の果

私は、日本人の回復力と忍耐力には、高貴さと勇気があると感じています。そしてそれはこれから、より明白になっていくでしょう。この時期は、日本のきつく結ばれた社会の強さと回復力が、真に力を発揮する時です。そして私の予想では、アメリカでは西海岸から東海岸に至るまで横行している分極化と言い争いと対決の政治的構図とは対照的に、日本人は協力し合うでしょう。だから、私たちは日本から少しだけ学ぶべきことがあるかもしれません。
私たちの心は日本の人々と共にあり、この悲劇的な震災に心からのお見舞いと同時に、最高の称賛の言葉を贈りたいと思います。


(なお、この原文"Sympathy for Japan, and Admiration"のほんの一部の訳が共同通信社のニュースフィードで「日本への同情、そして称賛」と題して出ています。しかしsympathyをここで「同情」と訳すのは不適切で(「哀れみ」などと訳しているものもあります)、「お見舞い」と訳すべきですし、いくら探しても全文翻訳がみつからなかったので自分でやってしまった次第です)。


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コメント

翻訳ありがとうございます。
とても心強く、誇らしく思いました
皆さんに伝えたいと思います。

ブログに転載可能でしょうか?
または、リンク可能でしょうか?

よろしくお願いします。

投稿: まーぱろ | 2011年3月13日 (日) 23:13

翻訳ありがとうございます。
翻訳機で読もうとしたのですが、限界がありました。。
日本人としてできることを頑張ろうと思います。

投稿: 橋口美穂 | 2011年3月15日 (火) 16:39

まーぱろ様 橋口様

ご支持ありがとうございます。もちろん転載・リンク歓迎です。
多くの人に読んでもらうためにやったことですから。
ただし出所だけは記載していただければ幸いです。

さそりいのしし

投稿: さそりいのしし | 2011年3月15日 (火) 17:47

私もクリストフ氏のコラムに感激しました。
ぜひ、ブログにリンクを張らせていただきたく、こちらにコメントしました。

原文やヤフーニュースでは絶対にここまでの気持ちにならなかったと思います。
翻訳ありがとうございます!

投稿: 小マダム | 2011年3月17日 (木) 03:25

小マダム様

コメントおよびリンクありがとうございました。
このようなお言葉をいただけると、やった甲斐があります。

さそりいのしし

投稿: さそりいのしし | 2011年3月17日 (木) 04:46

全文読めて有り難いです。翻訳ありがとうございました。

詳細は分かりませんが携帯のテロップ(?)に「被災地一部治安悪化」の情報を目にしたとこで、日本人として非常に残念です。

国民性とかピンとこないけど、日本人を知る外国の方の話を聞き、感謝とともに自分も恥じない行動をしたいと思いました。

また読みにきますね。

投稿: あずなん | 2011年3月17日 (木) 23:56

このコラムの存在は知っていましたが、完全な翻訳を読むことが出来て、非常にうれしいです。実は私は被災地ではない、中国地方の者ですが、全国展開の宅配会社に勤務しています。震災後のお客さまからの問い合わせ量はすさまじく、電話は鳴りやまずパンク状態。ここ一週間は年末の繁忙期以上でした。中には震災で大変な時でも心無い方もいて、何度心が折れそうになったことか!でもその度、「震災後の今、私たちが出来ることを頑張るしかない」と同僚ともども毎日の仕事をこなしてきました。だからこそ、このコラムを読んで、とても感動して、勇気をもらいました。疲れすぎてふらふらの状態ですが、明日からまた仕事頑張れそうです。どうもありがとうございました。

投稿: えーし | 2011年3月19日 (土) 22:35

あずなん様 えーし様

コメントありがとうございます。
日本と日本人はこれまでも数多くの危機を乗り越えてきて、その度に体力をつけてきたと思います。
世界中が注目する中、再び優れた国民性を発揮して、失われつつあった日本の威信を取り戻すいいチャンスだと思っています。
頑張りましょう。

さそりいのしし

投稿: さそりいのしし | 2011年3月21日 (月) 01:55

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